私選と国選の違い
1 私選弁護人とは
私選弁護人とは、被疑者・被告人、またはその家族から直接
私費で弁護士に弁護活動を依頼され、選任された弁護士のこと
をいいます。
私選弁護人を選任できるのは、被疑者・被告人本人、その法
定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹です。
2 私選弁護人と国選弁護人の違い
私選弁護人も国選弁護人も、被疑者・被告人のため最善を尽くし、弁護活動にあたることに変わりはありません。私選弁護人と国選弁護人の違いを挙げるとすれば、以下のような違いがあります。
(1)選任時期
被疑者は、勾留請求をされれば、被疑者国選弁護人の選任請
求が可能となります。このため、逮捕段階で国選弁護人の選任
を請求することはできません。ただし、各弁護士会には、当番
弁護士制度があり、被疑者やその家族・知人から弁護士会に接
見依頼があれば、当番の弁護士が無料で接見に応じる制度があ
ります。
他方、私選弁護人は、被疑者やその家族から依頼があれば、
逮捕後できるかぎり早期に被疑者の接見に赴き、被疑者の了解
が得られれば、早い段階で弁護人を選任することができます。
(2)職務範囲
国選弁護人は、被疑者・被告人が適正な手続のもとで当該事
案にふさわしい判断を受けるべく、捜査弁護、公判弁護活動を
行います。
被疑者・被告人の私生活に関わる事項などは、職務範囲に含
まれません。
他方、私選弁護人は、被疑者・被告人やその家族との間の契
約により職務の範囲を定めますので、契約内容によっては、国
選弁護人の職務範囲より広い場合があります。
(3)費用
まず、公訴が提起されなかった場合に、国選弁護人の報酬などの費用の負担を求められたケースはあまり見たことがありません。ただし、必ずしも費用を負担させられないというわけではなく、検察官の請求により裁判所が決定をすれば、負担させられることもありえます(刑事訴訟法187条の2)。
次に、公訴が提起されたような場合であれば、判決言い渡しの際に、国選弁護人の報酬などの費用を被告人に負担させるか否かを判断します。
個別の事案によりますが、被告人に実刑を科す場合には負担
させず、執行猶予付の有罪判決を下す場合には、負担させられ
る傾向があるといえます。ただし、訴訟費用の負担を命じられ
た場合であっても、貧困のため完納することができない場合に
は、費用の全部または一部について免除の申立てをすることが
できます。
他方、私選弁護人は、被疑者・被告人やその家族との間で契
約を締結し、委任を受けますので、契約で取り決めた弁護士費
用を支払うことになります。
3 まとめ
あえて違いを述べるとすれば、国選弁護人であれば、負担する費用は低額であるが、自分の好きな弁護士を選ぶことができないのに対し、費用は、国選弁護人よりも高額ではあるが、自分の好きな弁護士を早い時期に弁護人として選任することができるという点だと思います。