交通事故の種類

 交通事故は、大きく分けて、物損事故と人身事故に別れます。物損事故とは、交通事故により人が負傷や死亡することはないものの、車両、建物や積載物などを破損してしまったような事故のことを指します。人身事故とは、交通事故などにより運転者や同乗者などが負傷したり、死亡したりしてしまった事故のことを指します。

 

 人身事故と物損事故では、以下のような違いがあります。

 

 

1 物損事故では自賠責保険が使えません。

  強制加入である自賠責保険の対象は、自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償を対象としますので、物損事故は対象になりません(自動車損害賠償保障法1条参照)。物損事故で加害者が任意保険に加入していない場合、被害者が損害賠償を受けることができない可能性があります。

 

 

2 物損事故では、被害者側が故意・過失を立証しなければ  

 なりません。

  自動車損害賠償保障法は、加害者側が、次の3つ全てを証明できなければ、事故によって生じた損害を賠償する責任があると定めています(自動車損害賠償保障法3条)。

 ①自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと

 ②被害者または運転者以外の第三者に故意または過失がなかっ  

 たこと

 ③自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

  すなわち、事故が加害者の故意または過失によって生じたものではないことを証明する必要があります。

  しかしながら、自動車損害賠償保障法は、物損事故を対象外 

 としていますので、物損事故の被害者は、事故が加害者の故

 意・過失により生じたものであることを証明しなければなりま

 せん。

 

 

3 物損事故の場合、原則として、慰謝料は認められませ 

 ん。

  人身事故の場合、通常、被害者が事故により精神的苦痛を被 

 った場合、これに対する損害賠償として慰謝料が認められま

 す。

  他方、物損事故の場合、物の価格の損害賠償がなされれば、 

 それをもって原状回復がなされたものと考えられるため、原則

 として、慰謝料は認められません。